ドイツ戦の後半、決勝ゴールを決め「ジャガーポーズ」で喜ぶ浅野拓磨選手(18)=23日、ドーハ(共同)
ドイツ戦の後半、決勝ゴールを決め「ジャガーポーズ」で喜ぶ浅野拓磨選手(18)=23日、ドーハ(共同)

 最初の東京五輪を4年後に控えた1960年、サッカー日本協会が初めて招いた外国人コーチが、ドイツ出身のデットマール・クラマーさん(1925~2015年)だった▼彼は母国に「ゲルマン魂」なるものがあると説いた。どんなに追い込まれても最後の笛が鳴るまで諦めないのが、戦う者の精神であると。実際、ドイツは国際大会で何度も奇跡を演じた。82年のワールドカップ(W杯)スペイン大会準決勝で、当時の西ドイツはフランスに延長で1-3とリードされながら追い付き、PK戦の末に勝ち上がった。その試合は先日、テレビで再放送された。当時を思い出したファンもいるだろう▼日本代表がW杯カタール大会初戦で、「師の国」を相手に劣勢をひっくり返して見せた。98年の初出場から22試合目で、初めての逆転勝利だ▼決勝点を奪った浅野拓磨選手の「ジャガーポーズ」を生で見たのは2017年8月。前回のロシア大会出場を決めた埼玉スタジアムでのアジア最終予選・オーストラリア戦だった。その本大会の登録メンバーに選ばれなかった4年越しのヒーローは「その時から、今日の日を想像してきた」と誇らしげだった。不屈の闘志を貫いた▼天国のクラマーさんは、初めて母国を破ったサムライ・ブルーをどう見ただろうか。「青は藍より出(い)でて、藍より青し」。精進は続く。まだ見ぬW杯8強以上へ、さらに濃く染まれ。(万)