ヒマラヤ遠征の様子を写真を交えて紹介する石川直樹さん=5日、松江市内
ヒマラヤ遠征の様子を写真を交えて紹介する石川直樹さん=5日、松江市内

 生粋の旅人として有名な写真家の石川直樹さん(45)が、新型コロナウイルスに伴う海外渡航の規制が緩和された今年の春から秋にかけて、ダウラギリ、カンチェンジュンガ、K2、ブロードピーク、ナンガパルバット、マナスルといったヒマラヤの8千メートル峰を立て続けに登頂した。先日、報告会を兼ねたトークイベントが松江市であり、足を運んだ▼8千メートルの頂に立った頭上には成層圏(高さ10~50キロの大気層)が広がり、宇宙を身近に感じられるという。ヒマラヤ遠征と時期が重なったためにかなわなかったが、今年は宇宙飛行士の募集に応じようと、書類を準備していたそうだ▼視野にあるのは、火星の最高峰・オリンポス山。標高は25キロにも達し、山に登るのか、それとも宇宙へ飛び出すのか-。見境がつかなくなるようなスケールの大きさに圧倒される。そもそも、火星で登山という行為が成立するのか、興味は尽きない▼気力、体力が減退する平凡な中年にとって、石川さんの体験は想像を絶する。ただ幸いにも、麓の集落からピークまで山行全体を記録した写真や文章によって、その魅力の一端を感じることができる▼ここ2、3年、コロナ禍でなかなか外へと目が向かず、何かと内にこもりがちな風潮の中で、衰えることがないチャレンジ精神に大変勇気づけられた。近年、海外へ出る機会を逸してしまった10代、20代にも知ってほしい。(万)