広告であることを隠してインターネットや交流サイト(SNS)で商品を宣伝する「ステルスマーケティング(ステマ)」が、景品表示法の「不当な表示」に加えられ、今年中に規制の対象になるという。消費者庁が昨年末に方針を示した▼SNSで影響力のある「インフルエンサー」と呼ばれる人々に金を払い、その人の素直な感想であるかのように称賛してもらう手法などがそれ。先祖が苦しんでいるなどと不安をあおって物を売りつける霊感商法も駄目だが、ステマの欺き方もたちが悪い▼政府の規制に納得するが、一方で政府(防衛省)が人工知能(AI)技術を使い、SNSを通じて世論を誘導する工作の研究に着手したとの報道が12月にあった。インフルエンサーを利用した情報発信も考えているらしく、それこそステマにならないか心配だ▼英語ステルスの意味は「こっそり行動すること」。「盗む」の動詞スチールから派生した語であり、レーダーに探知されない技術を備えたステルス戦闘機など軍事関係の語として広まった▼インターネットの普及とともに真偽不明の情報があふれる昨今は、さながら情報戦を生きているかのよう。規制ができても、それをかいくぐる手法が生まれるだろう。特殊詐欺被害もなかなかなくならない。悪意のある情報に被弾しないためには、一人一人が情報を見極める力を高めるしかない。安易に信じないことだ。(輔)