正月が過ぎ、多くの小中学校であさって、3学期の始業式が行われる。冬休み明けに持参する宿題の定番と言えば書き初めだろう。半紙を広げ、墨汁を含ませた筆を走らせて、一年の抱負や目標をしたためる。起源は平安時代の宮中行事で、明治時代に学校の書道教育に取り入れられたという▼準備や片付けは少し手間だが、スマートフォンで打ち込む「デジタル活字」に慣れ親しんだ子どもたちが、手書きの文字にじっくりと向き合える文化は貴重だ▼学習指導要領によると、小学生は6年間で1026字の漢字を習い、中学生は3年間で1110字を学ぶ。世界中を見渡しても、これほど文字数の多い言語はない▼覚えるのは一苦労だが、漢字の魅力は何といっても1文字でさまざまな意味を表せること。形や成り立ちからさまざまなイメージを膨らませることもできる。2字以上を組み合わせることで、さらに表現の幅は広がる▼ところが、ロシアのウクライナ侵攻後、違和感を覚える言葉を見聞きするようになった。「戦争犯罪」や「非人道的兵器」がその一例。戦時の国際ルールはあっても戦争自体が罪なのであり、人を殺傷する目的で造られた兵器に人道的なものが存在するはずがない。こうした言葉を無意識に用いることが、戦争の正当化や軍拡競争の後ろ盾になってしまわないかと、「世界平和」と書かれた書き初めを見ながら考える。(文)