島根県邑南町の「はたちを祝う式典」に参加する新成人=3日、邑南町淀原の町健康センター元気館
島根県邑南町の「はたちを祝う式典」に参加する新成人=3日、邑南町淀原の町健康センター元気館

 高校バスケットボールを舞台にした井上雄彦さんの漫画『SLAM DUNK(スラムダンク)』の劇場アニメ映画が人気だ。公開初日にのぞくと、グッズを手にした女性が売店に並び、偶然会った知人男性が開場を待っていた。皆アラフォー(40歳前後)の「スラダン世代」▼1990年代に「週刊少年ジャンプ」で連載され、バスケ部に入った赤い髪の主人公桜木花道が仲間と全国制覇を目指す物語。躍動的な試合シーンと心を揺さぶるせりふは、ずっと頭の中に残っている▼チームの監督安西光義の<あきらめたらそこで試合終了だよ>は作品を代表する名言。<なぜオレはあんなムダな時間を…>は、後悔の中、挫折からはい上がろうとする桜木のチームメート三井寿の言葉だ。敗戦の将が選手にかけた<『負けたことがある』というのが いつか大きな財産になる>からは、人生の先輩としての大人の実体験がのぞく▼立ちはだかる対戦相手を越える姿から挑戦する勇気をもらった。彼らが発する言葉は、気持ちを奮い立たせてくれるアラフォーの共通言語だろう▼きょうは成人の日。自らの成人式は将来が見通せない就職氷河期だった。だから新型コロナ禍で思い描く学校生活を送れなかった新成人の気持ちは察するに余りある。でもいつか思い返してほしい。きっと隣には、私たちにとってのスラダンのように支えてくれる存在があったことを。(目)