ライトアップされた米子城跡の石垣=2022年8月、米子市久米町
ライトアップされた米子城跡の石垣=2022年8月、米子市久米町

 どこか見覚えのある風景だなと、ずっと気になっていた。俳優の大泉洋さんと成田凌さんの軽妙な掛け合いで進む凸版印刷(東京)のテレビCMの話▼城跡に立つ成田さんが石垣に向けてタブレットを掲げると、存在しないはずの城が出現。すると、殿様姿の大泉さんが「城が、私の城がありのままの姿で…」と絶叫する。「このお城のお殿様ですか」と成田さんから聞かれ「いえ、役作りです」と答えるのがオチ。あまりのばかばかしさに笑ってしまった▼この舞台が米子城跡。同社はVR(仮想現実)技術を生かして失われた文化財の再現に取り組んでおり、かつて米子城に存在した二つの天守や登り石垣など歴史的建造物を高精度3次元CGで復元した。こんな立派な城があったのか、と誇らしく思う▼失われたものがVRで再現できたら-。そんなことを考えていたら、ふと思い浮かんだ。選挙を巡る世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員ら政治家の関係である。細田博之衆院議長(島根1区)、安倍晋三元首相が会長を務めた清和会(安倍派)が最も関係が深かったとされるが、安倍氏は凶弾に倒れ、細田氏もだんまりを決め込んだままだ▼とはいえ、真相は失われたわけではない。岸田文雄首相の気持ち一つで〝復元〟は可能だろう。年が明けたからといって、忘れるわけにいくまい。ありのままの姿を多くの有権者が知りたいはずだ。(健)