11日には火星のすぐ近くに
時々夜空に現(あらわ)れる彗星(すいせい)。その正体は氷とちりでできた天体です。遠くからやって来て、太陽に近づくと熱で氷が少し溶(と)けてガスとちりが広がり、ぼんやりした姿(すがた)に見えます。中には尾を引くものもあり、掃除(そうじ)道具のほうきのように見えることから、彗星は「ほうき星」とも呼(よ)ばれます。
今、地球の近くを通り過(す)ぎている彗星は、Z(ズィー)T(ティー)F(エフ)彗星です。彗星には発見した人の名前が付きますが、最近では、個人(こじん)が彗星を発見するよりも、天文台などの天体観測(かんそく)のチームが発見することの方が多く、ZTFもそういったチームの名前です。
彗星の明るさを正確(せいかく)に予測することは難(むずか)しいので、これを書いている時点で、ZTF彗星がどれぐらい明るくなっているのかはよく分かりません。それでもおそらくは、肉眼(にくがん)では見にくいとしても、双眼鏡(そうがんきょう)では見えると思います。
この彗星を見ることをおすすめするのは、これから大変探(さが)しやすい位置に差しかかるからです。夜空で目立つオリオン座(ざ)とすばるの間のあたりを移動(いどう)します。
特に2月11日には頭の真上あたりで赤く輝(かがや)く火星(かせい)のすぐ近くに来ます。火星に双眼鏡を向けさえすれば、同時にZTF彗星も見えるはずです。14日から15日には、火星と似(に)て赤っぽい星、おうし座のアルデバランの近くを通ります。その星を目当てにして双眼鏡で見つけましょう。
そして、ぼやっと広がる彗星の形をじっくり観察してください。
◆島根県立三瓶(さんべ)自然館サヒメル天文事業室長・竹内幹蔵(みきまさ)