「ガチ中華」が近年、話題になっている。本場・中国の味さながらの麻婆豆腐や火鍋といった料理を提供する店のことを言い、2022年の流行語に選ばれるなど人気が広がっている。山陰両県で本格的な味わいを楽しめるガチ(うま)中華料理店を紹介する。(Sデジ編集部・宍道香穂)
▽中華 虎楼(コロウ)(松江市灘町)
松江市灘町で16年にわたって営業する「中華 虎楼」は全メニュー千円前後で、四川料理を中心に楽しめる。男女問わず幅広い年代の客が通い、常連客も多い。
人気は「四川麻婆豆腐」や「黒酢酢豚」、酸味がきいた「サンラータン麺」。四川麻婆豆腐はトウバンジャンのほか、中国・四川省産の山椒、唐辛子を使っている。酢豚は黒酢のまろやかな味わいが本格的。豚肉はごろりと大きく、タマネギなどの野菜はシャキッとした歯ごたえが楽しめる。

酸味と辛みがきいたサンラータン麺は炒り卵が入っていて、まろやかさも感じる。一口大に切ったキャベツは甘くておいしい。辛すぎず、くせになる味わいだ。


ほかにも人気の「サーモン エビ アボカド ガーリックバター炒め」は、あっさりとした味わいながらコクがあり、うまみがぎゅっと詰まっている。大ぶりのエビやサーモン、アボカドのほかブロッコリー、きくらげ、キノコなども入っていて食べごたえがある。ガーリックバターのいい香りに箸が進んだ。

山陰発の人気バンド、Official髭男dismのメンバー小笹大輔さんも学生時代から足を運んだといい、ヒゲダンのファンが訪れることもある。店の壁には小笹さんのサイン色紙がある。
中華虎楼は午前11時半~午後9時営業。日曜定休。
▽中華料理 鴻福園(ホンフエン)(松江市伊勢宮町)
中華料理は魚介類を多く使う上海料理、濃厚な味付けが多い北京料理、スパイスのしびれる辛さが特徴の四川料理といった、さまざまな種類がある。松江市伊勢宮町にある中華料理店・ホンフエンは四川、広東、北京と幅広いジャンルの中華料理を用意し、いろいろな味を楽しめる。
人気メニューは「四川風よだれ鶏」(750円)、「麻婆(マーボー)豆腐」(820円)、「豆苗の塩炒め」(720円)。よだれ鶏は低温でじっくりゆでた鶏もも肉に、自家製ラー油やトウバンジャン、香辛料を配合したタレをかけた一品。マーボー豆腐は自家製トウバンジャンのほか唐辛子や山椒が入り、しびれる辛さがクセになる。


豆苗をニンニクと炒め、塩で味付けした「豆苗の塩炒め」は、1人で5人前を注文するほどの大ファンもいるという。豆苗はシャキッとした新鮮な食感で、シンプルな味付けにニンニクの良い香りが効き、食欲をそそる。細切りのジャガイモを同じように塩で炒めた「じゃがいも細切りの塩味炒め」(680円)はあっさりとした味わいで、女性を中心に人気がある。

ほかにもビールと相性ぴったりの「手羽先の四川風炒め」(800円)、唐辛子やトウバンジャン、山椒の辛みがきいた「本場四川焼きそば」(780円)、煮込んだ豚肉をごはんにかけた台湾料理「ルーローハン」(880円)も人気。

店は大阪府や松江市内のレストランで料理の腕を磨いた呼延海(コウイェンハイ)さん(49)=中国・吉林省出身=が2017年に開き、地元住民を中心に多くのファンが通う。午後5時~深夜12時の営業。不定休。
▽四川中華五智(米子市角盤町1丁目)
「四川中華 五智(ごち)」は米子市角盤町1丁目の複合施設「GOOD BLESS GARDEN(グッド・ブレス・ガーデン)」の1階にある。2019年にオープンし、マーボー豆腐や担々麺といった四川料理のほか北京ダック、ピータン、点心など幅広いジャンルの本格中華を提供する。
人気メニューは「胡麻(ごま)担々麺」(950円)や「五智特製麻婆豆腐」(1280円)、 「五智特製エビのチリソース」(1250円)。担々麺はゴマペーストをふんだんに使い、トッピングにも黒ゴマペーストをかける。ゴマの濃厚な香りやまろやかさの中にピリッとした辛みを感じる、絶妙なバランスの一品だ。

マーボー豆腐はトウバンジャンやテンメンジャン、コチジャンなど計12種の調味料を配合し、味に深みを出している。中でもトウバンジャンは風味が違う3種を使用する。うち2種は熟成したトウバンジャンで、こくのある味わいが味噌(みそ)に似ているという。食べてみると確かに、辛いだけではなく味噌のようなこくや香り、甘さを感じた。辛さを堪能したい人は、しびれる辛さの「四川麻婆豆腐」(1380円)もお薦め。

エビチリは尾付きの大ぶりなエビを使い、しょうゆや酢、香味野菜などが入ったソースでさっぱりとした味わいに仕上げている。甘辛いソースは程よい酸味が効いていて、プリッとした食感のエビは食べごたえがある。ソースにはネギといった香味野菜のほか山椒のオイルも入っていて、サラダのような感覚であっさりと食べられるのがうれしい。


辛み、うまみがつまったスパイスパウダーを振りかけたスペアリブ(1520円)は、辛い物が好きな人にお薦めのメニュー。コショウやトウガラシ、山椒など15種の食材を配合したスパイスを、素揚げした豚肉にふんだんにかけている。スペアリブが隠れるほど真っ赤なスパイスパウダーが振りかけてある様子は迫力がある。一口食べた瞬間、想像以上の辛さが口に広がり驚いたが、辛さだけでなくエビやニンニクのうまみもあり、やみつきになりそう。
営業時間は午前11時半~午後2時半、午後5時~午後9時半。火曜定休。

紹介したお店以外にも山陰両県には、住民に愛される中華料理店が多い。本格的な味から、お客の好みに合わせたメニューなど幅広く楽しめる。いろいろなお店を訪ねて、人気のメニューを味わってみるのも、冬が終わったこれからの季節の楽しみだ。