美しい日本庭園と近代日本画の巨匠・横山大観コレクションで知られる足立美術館(安来市古川町)が、新型コロナウイルスの感染拡大で人の往来が難しい中、県外の美術館に収蔵品を貸し出す「移動展」に力を入れている。4~8月には宮城、岩手両県の美術館で立て続けに開催し、大観らの名品を披露。会場では庭園の魅力も伝え、感染収束後の来客を期待する。(渡部豪)
同美術館は1970年にオープン。美術品に加え、米国の専門誌で18年連続日本一に選ばれた広さ約16万5千平方メートルの日本庭園も人気を集める。
移動展は2、3年に1回のペースで、全国の百貨店などから依頼を受けて実施してきたが、近年は美術館からの依頼が増えているという。足立美術館の全国的な知名度の高まりに加え、コロナ禍で海外から美術品を借りにくくなったことも、国内の美術館同士で作品の貸し借りが進む一因になっているとみられる。
東日本大震災から10年の節目の今年は、東北地方では初の移動展を宮城、岩手両県の公立美術館で開催。宮城県美術館(仙台市)が4月24日~6月6日、岩手県立美術館(盛岡市)が同26日~8月1日の日程で開き、大観や竹内栖鳳(せいほう)、菱田春草など近代日本画壇を代表する作家の秀作約60点を展示する。
各会場では、色紙や文具といった足立美術館のオリジナルグッズを販売するほか、庭園を紹介する動画を流して魅力発信に努める。安部則男学芸部長は「東北の皆さんに収蔵品を楽しんでいただき、状況が落ち着いたらぜひ当館に足を運んでもらいたい」と話した。
移動展は近代日本画が中心だったが、今後は収蔵する現代日本画、幅広い芸術分野で活躍した北大路魯山人の作品貸し出しも検討するという。