米ニューヨーク州の大陪審に起訴されたトランプ前大統領。大統領選の候補だった2016年に不倫相手に口止め料を支払ってもみ消しを図った疑惑に絡み、業務記録を改ざんした34件の州法違反罪に問われ、裁判所で無罪を主張した▼口にせずとも、あの言葉を心の中で叫んだのではないか。フェイクニュース(偽情報)だと▼この言葉が世に浸透したのが16年の大統領選だった。戦前の予想を覆し、共和党のトランプ氏が民主党のヒラリー・クリントン氏を破った選挙。マケドニア(現北マケドニア)の学生が、広告収入を目当てに大量の偽情報を交流サイト(SNS)に流したのが一因とされる。その後、トランプ氏自身が自らに不都合な情報を「フェイクニュースだ」と断罪しているのは周知の通り▼フェイクニュースは海の向こうだけの話ではない。最大震度7を2度も観測した16年の熊本地震では発生直後、動物園のライオンが脱走したという偽情報がSNSで拡散された。現場を取材した地元紙が「ライオンは逃げていない」と掲載したことで騒ぎが収束した。百聞は一見にしかず、である。コロナ禍でも「ワクチンを打つと不妊になる」という偽情報が広がり、厚生労働省が公式に否定する事態になった▼ちなみに熊本地震の前震となる最初の揺れが起きたのが、7年前のきょうのこと。真偽を見極める目の重要性をかみしめ、気を引き締める。(健)