旧ソ連ウクライナで1986年4月26日未明に起きたチェルノブイリ原子力発電所事故から、きょうで37年。広範囲に放射性物質が拡散し、大人たちが日本にまで「黒い雨」が降ると恐れていたことを覚えている▼その年、西欧諸国から注文が殺到し、輸出が激増したのが、みそだった。きっかけは事故の6年前にロンドンで英訳出版された『長崎原爆記』。著者は医師の秋月辰一郎さん(1916~2005年)。爆心地から1・8キロの病院で被爆、治療に当たりながら、独自の食事指導により、自身を含めた医療スタッフや患者が重い原爆症にならなかった実体験を記した▼その食事は、レントゲン照射の副作用治療から想起した。「爆弾を受けた人には塩がいい。玄米飯に塩をつけて握り、濃いみそ汁を毎食食べるんだ。砂糖は絶対にいかん」。塩はミネラルたっぷりの天然塩、みそは無添加のものだ▼秋月さんの食療法を実証しようと、90年代にマウス実験したのが広島大のグループ。みそ入りの餌を食べたマウスは、放射線を照射しても小腸に新しい細胞が生まれ続けたという。臨床試験ではなく明確な根拠にはならないが、発酵食品が体にいいことは明らかだ▼一方で、みそや漬物など日本古来の発酵食品の消費は、食卓の洋食化で減っている。万事は健康な体があってこそ。食品の値上げが続くが、体に入れる物を間違えば、元も子もない。(衣)