浜田漁港のブランド魚「どんちっちアジ」がようやく店頭に並び始めた。前年並みに遅いスタートで、記録的な不漁だった過去2年と同様にマアジの漁況は厳しい見通し。地元巻き網船が1船団での操業となる影響も避けられず、仲買、加工業者は仕入れ難を覚悟する。
水揚げされたマアジの脂質測定で認定し、初出荷は23日。記録が残る2007年以降、最も遅かった前年(5月25日)とほぼ同時期で、出荷量は初日1・7トン、24日8・3トン、25日5・0トンとなっている。
島根県水産技術センター(浜田市瀬戸ケ島町)によると、県西部沖のマアジ来遊量は前年並みに少ない見込み。対馬暖流に乗って北上する、脂の乗った群れの回遊が今年は特に遅かったという。
前年の出荷量は249トンだった。このうち浜田漁港を拠点とする地元巻き網2船団の水揚げが6割近い142トンで、境や隠岐の地元外船は107トン。ウエートが高い地元船は1船団が転覆事故で休漁となり、前年よりも漁獲力は落ちる。
年によって地元内外船の水揚げ割合にばらつきはあるが、浜田市水産振興課の永見監課長は「水揚げ量減少の懸念は強い」と話す。
仕入れ業者からは不安の声が上がる。
3月に一部オープンした山陰浜田港公設市場(同市原井町)で、平均脂質(ブランド認定は10%以上)を表示して販売する山本鮮魚店は初日の23日、脂質12・3%のどんちっちアジを1匹280円、小ぶりで同7・5%の認定外を70円に値付けして売り出した。山藤茂雄代表(63)は「取引先用の確保が優先。店頭に何回並べられるか分からない」と嘆く。
缶詰や干物を製造するシーライフ(浜田市原井町)は原魚の確保が難航するのを見越し、どんちっちアジの商品でギフト用カタログ向け販売の新規開拓を見合わせた。コロナ禍の内食需要の高まりでインターネット販売は伸びており、河上清志社長(54)は「需要に応えられるほど原魚を集められるだろうか」と気をもんだ。
(村上栄太郎)