記者団の取材に応じる岸田首相=22日午後、首相官邸
記者団の取材に応じる岸田首相=22日午後、首相官邸

 歴史は繰り返すか。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を終え、ささやかれる衆院解散総選挙▼1979年に初めて東京でサミットが開かれて以降、6回あった日本開催年のうち79、86、93、2000年の4回は、時の首相(全て自民党)が解散総選挙に打って出た。北海道洞爺湖サミット(ロシアを含むG8)があった08年も、サミット直後に内閣総辞職した当時の福田康夫首相の意図は、自民党総裁選を経て選ばれた新首相による解散総選挙だったから高い確率だ▼16年の伊勢志摩サミットに臨んだ故安倍晋三首相も衆参同日選を検討した。衆院が中選挙区制で、候補の個人後援会がフル稼働した時代に比べ同日選の恩恵が薄いとみたため、解散は見送った(『安倍晋三回顧録』)▼政情を図りながら解散のタイミングを考えない宰相はいないだろう。だが平和、環境分野で国際協調が不可欠な時代、サミット後の世界に責任を持つという気概に裏付けられた行動に期待したい▼岸田文雄首相は、核廃絶を願う人々の原点である広島に核保有国の首脳らを招き、理想を語るという難しい選択をした。これからの振る舞いに、世界が注目している。唯一の被爆国でありながら、核兵器禁止条約を批准していない「矛盾」も、より厳しく問われよう。そのような時に取る選択が解散総選挙では、広島サミットの目的を政権浮揚のためと誤解されかねない。(万)