対話型鑑賞法で作品を鑑賞するイメージ。左は思考サイクルの図
対話型鑑賞法で作品を鑑賞するイメージ。左は思考サイクルの図
筑波大学芸術系准教授 林 みちこ
筑波大学芸術系准教授 林 みちこ
対話型鑑賞法で作品を鑑賞するイメージ。左は思考サイクルの図 筑波大学芸術系准教授 林 みちこ

人と対話することで自分の考え深まるよ

 皆(みな)さんは、美術(びじゅつ)館に行って絵や彫刻(ちょうこく)を見るのは好きですか?「絵はよくわからない」「むずかしい」という人が多いかも。でもね、美術作品を見るときに実は「答え」は決まってないんです。作者が伝えようとした考え、というのはありますが、作品は世の中に出たとたんに「開かれた」ものとなります。受け取る側の自由です。そう考えると、少し気が楽になりませんか?

 美術の見方に「対話型鑑賞法(たいわがたかんしょうほう)」というのがあります。一緒(いっしょ)に見ている人たちで話し合いながら、その作品が何を言おうとしているか考えるものです。「じっくり<見る>→<考える>→<話す>→他の人の意見を<聞く>→<考える>」を繰(く)り返していきます。大事なのは、他の人の意見を聞くことです。ニューヨーク近代美術館(MOMA)で考案された方法で、アメリア・アレナスという先生が編(あ)みだしました。

 その後日本にも入ってきて、今は美術館でも学校でも、この方法で鑑賞をすることが多いです。皆さんのなかにも、やってみたことがある人がいるかもしれません。この方法のすごいところは、作品を「じっくり、よく見る」ことができるようになる点です。

 「対話」は古代ギリシアの哲学(てつがく)者ソクラテスが、弟子(でし)のプラトンらと行った学びの方法で、哲学の起源(きげん)とも言えるものです。これまでの連載(れんさい)でわかる通り、サイエンスについても、何かをじっくり観察し、「なぜかな?」という学問上の問いをもち、それについて考え、実験し、今度はその結果を確(たし)かめる、というサイクルをまわしていきます。一人の科学者の頭の中でも、この対話のサイクルが繰り返されているんですね。

 

筑波大学芸術系准教授 林 みちこ
■略歴(りゃくれき)
 1972年生まれ。島根大学教育学部付属(ふぞく)小、付属中、松江(まつえ)東(ひがし)高校卒。95年筑波(つくば)大学卒。筑波大学大学院を経(へ)て2000年から11年までポーラ美術館で学芸員として勤務(きんむ)。同年から島根大学教育学部嘱託講師(しょくたくこうし)。17年に筑波大学大学院博士後期課程修了(はくしかていしゅうりょう)(芸術学)後、現職(げんしょく)