リングに入場する三沢光晴さん=2007年12月、東京都千代田区の日本武道館
リングに入場する三沢光晴さん=2007年12月、東京都千代田区の日本武道館

 14年前、プロレスの試合中に46歳で亡くなった三沢光晴さんは、全日本プロレスや自ら旗揚げした団体で大エースだった。その前は覆面をかぶり2代目タイガーマスクとして活躍した。覆面を脱ぎ素顔で戦い始めると、顔面に技を受ける際の痛みの激しさに驚いたという。タイガーの薄いマスクもあるなしで大違いだったのだろう▼こちらのマスクはどうか。新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類となり、きょうで1カ月。マスク着用が個人の判断になったのは3月13日で、間もなく3カ月になる。大型連休中の大移動、5類移行を経ても、コロナは今のところおとなしい▼タイガーと違いマスクのない生活は快適だ。鼻の下にずり落ちたり眼鏡が曇ったりする不快感はなく、肺への負担も軽くて深呼吸が心地よい。素顔で気兼ねなくバスに乗れ、以前に戻ったようだ▼「ノーマスク万歳」と礼賛したいが、それ一色では政治家を褒めるのと同様、後で何が起こるのか分からないので手放しは怖い。世相は急速な開放モードでも次の流行前かもしれないのだ▼感染拡大が深刻な時、約100年前に大流行したスペイン風邪が忘れられかけていたのを疑問に思った。やはり、ことわざの「喉元過ぎれば熱さを忘れる」、ユリウス・カエサルの言葉「人は見たいものしか見ない」は言い得て妙。人間の本質としてかみしめコロナを伝えたい。(板)