JR西日本が木次線を走るトロッコ列車「奥出雲おろち号」の運行を終わらせる方針を決めたことに、沿線住民は一様に肩を落とした。沿線観光の目玉となっているだけに集客への影響に気をもんだ。
奥出雲おろち号は急勾配をジグザグに上る、国内で数少ない「3段式スイッチバック」が魅力。新緑や紅葉、日本最大級の二重ループ橋「奥出雲おろちループ」などの風景を、ガラスのない開放的な車窓から眺められるのが人気となっている。
沿線の道の駅「奥出雲おろちループ」(島根県奥出雲町八川)は山肌に沿って列車が走る姿を望めるのが売りで、藤原紘子駅長(37)は乗降客に加え見物客も減ると指摘。「運行が終われば、売り上げは確実に減る」と経営への影響を案じた。
木次駅(雲南市木次町里方)で家族向けのイベントを開くなど、利用促進に取り組む市民団体「サンカクカフェ」の岸本寛子代表(44)も地域観光の呼び水になっていると強調。「雲南、奥出雲で一日旅行という楽しみを与えてくれるシンボルだ」と述べた。
列車は観光客だけでなく、地元住民にも愛される存在。横田幼児園(島根県奥出雲町横田)はおろち号を使って遠足をしており、足立維久子園長(56)は「乗ることは子どもたちの楽しみ。ふるさとの良さを学ぶのにも適している」と運行終了の方針を残念がった。(清山遼太)