通常国会が閉幕し、参院本会議場を後にする議員ら=21日午後
通常国会が閉幕し、参院本会議場を後にする議員ら=21日午後

 取材拠点の国会周辺は通常国会が閉幕し、議員の姿も消えて静かになった。秘書やマスコミ関係者を含めて、あいさつのように「衆院解散はあるのか」と意見を交わした頃が遠い昔に感じる▼岸田文雄首相が解散見送りを表明し、嵐が去った会期末の21日、参院本会議では自民党の舞立昇治氏(鳥取・島根合区選挙区)が質問に立った。248人の全参院議員が集まる舞台で、地方財政の充実や審議会での地方人材の活用について、政府の姿勢を問うた▼感染症の世界的大流行や首都直下型地震による都市の脆弱(ぜいじゃく)性と、人材や食料、エネルギーを生む地方の重要性を対比させ、東京一極集中是正を主張。「島根県の面積の1割にも満たない東京23区の区議だけで902人も存在する。国と地方議員のパワーバランスが大都市圏に偏り、政治の力をより強く必要とする地方の声が減っていく」と議員偏在も指摘した▼気になったのは議場の温度差だ。舞立氏が一極集中是正を声高に訴えれば訴えるほど、野党からは「(こんな国に)誰がしたの」などと、やじが強まった▼さらに残念だったのは松野博一官房長官の答弁だった。「政府として引き続き、政策課題に応じ、人材の活用や地方の現場の実情把握に努め、地方の声を政策に生かしてまいる」と淡々と述べた。時間にしてわずか35秒。短さに議場がどよめいたほど。本気度はみじんも感じられなかった。(吏)