「モテる大人になれ、と従業員に言っています」。そう話すのが宮崎県の最南端・串間市にある農業法人「くしまアオイファーム」会長兼CEOの池田誠さん(53)。先日、出張先の宮崎市内で話を聞いた▼「モテる」とは、単にルックスやスタイルがいいことではない。(1)自分に自信を持つ(2)人に優しくする(3)人のせいにしない-という同社の行動指針に沿って働くことを指す。「いい会社はファンが多い。ファンがつくのは会社自体ではなく従業員ら個人。だから会社の価値は人にある」。もっともな考えだ▼急逝した父親の後を継ぎ、21歳でサツマイモ農家になった。40歳でJAへの出荷をやめて直接取引を始め、海外への輸出を拡大。年間輸出量は1200トンに上り、国内輸出シェアの25%を占める▼「他産地の茨城や千葉、徳島は大消費地に近いが、宮崎は地理的に遠く、流通経費で利益が減ってしまう」。確かに串間市から福岡市までは高速道路を利用しても5時間前後。そこで目を付けたのが海外だった。「アジアに向けては、他の生産地より宮崎の方が地理的に近い」▼現在人口約1万6千人の串間市には「若い頃、自分が働きたい場所がなかった」と振り返る。だからこそ「モテる大人」にこだわり、企業の魅力度向上に努める。100人いる従業員の平均年齢は30歳という。よく似た環境にある山陰にとってモデルケースになりそうだ。(健)