きょうで6月が終わり、特別な思いでカレンダーをめくる人が石見部には多くいることだろう。島根県西部を襲った昭和58年7月の「58豪雨」から40年を迎える。107人の犠牲が出た災害の記憶は消そうにも消せない。先日の本紙紙面でも当時の惨状が生々しく語られていた▼幾度となく水害を経験してきたこの地で節目に当たりこんな声も聞いた。「今年はちょっと怖いんよ」。どういう巡り合わせか、58豪雨の40年前、今年から数えるとちょうど80年前の昭和18年も大水害に見舞われた。この時は9月の台風で石見部を中心に土砂災害も起き、犠牲者は全県で400人とも500人とも▼大惨事の体験を語れる人はもう少ないかもしれないが、記録は残る。「れきしーな」の愛称が付いた益田市立歴史文化交流館で開催中の企画展に被害の様子を写した貴重な写真が展示されている。市内の公民館で見つかったガラス乾板の一部をデジタル化したものという▼崩れ落ちた崖に立ち尽くす人たち、流失したであろう木橋の架け替え工事。写し出された被災の風景は時代を感じさせる。何せ戦時中に起きた災害である。人手も資材も足らず、復旧作業が難航したことは想像に難くない▼物騒だから「40年に1度」に深入りはしないが、今週末は梅雨前線が停滞して大雨の恐れがあるそう。災害の歴史を顧みて備えは万全に。用心するに越したことはない。(史)