2015年に一畑百貨店が約40年ぶりにリニューアルした紙袋
2015年に一畑百貨店が約40年ぶりにリニューアルした紙袋

 首都圏に住む島根県出身の経済人に「ショッピングバッグは最高の広告塔」と教わった。出張や旅行などで東京や大阪に出て、街を歩く人、電車に乗る人が手にしている百貨店や高級スーパーマーケットの洗練されたデザインのバッグを観察し、消費者の関心はどこにあるのか、何がはやっているかを推し量る指標としていた。インターネット通販全盛の今は、そう思う人は少ないのかもしれない▼目にすると「街の元気」を感じた百貨店のショッピングバッグが、島根県内でもう見られなくなると思うと寂しい。来年1月中旬での閉店を決めた松江市の一畑百貨店のそれは、赤茶色をベースにした地味なデザインだ。だがよく見ると、色とりどりの「点」で出来上がっている▼百貨店のインターネットサイトによると、松江城のサクラ、宍道湖の夕日、松江市の花であるツバキ、抹茶やシジミなど故郷を形作ってきた12色が選ばれている▼閉店後の対応を巡っては、従業員の雇用維持が最優先なのは間違いない。JR松江駅前にある建物の活用は、もし買ってくれる事業所があれば用途はあれこれ言うべきではないかもしれない▼ただ、百貨店での買い物に憧れた世代にとっては、ショッピングバッグに込められた思いが跡地活用にも継承されることを願うのみだ。その土地を象徴し、目に見えるランドマークやアイコンの存在はネット時代でも必要だ。(万)