中国電力上関原発の建設予定地(画面中央)。周辺に広がる同社所有地に中間貯蔵施設の建設が検討されている=2日午後、山口県上関町(共同通信社ヘリから)
中国電力上関原発の建設予定地(画面中央)。周辺に広がる同社所有地に中間貯蔵施設の建設が検討されている=2日午後、山口県上関町(共同通信社ヘリから)

 いくつもの事情が複雑に絡み合った末での「回答」だろう。

 中国電力が山口県上関町に、原発から出る使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設の建設を検討していると発表した。しかも、同様に中間貯蔵施設を必要としている関西電力との共同開発を前提にボーリング調査などを進めるという。

 地元が受け入れを了承した場合、島根原発(松江市鹿島町片句)だけではなく、関電の原発から出る使用済み核燃料も受け入れることになる。

 もともと中電にボールを投げたのは上関町だった。町では1982年に上関原発の計画が浮上。中電は2009年に敷地造成などの準備工事に着手した。

 ところが11年の東京電力福島第1原発事故後、建設は中断。町財政は逼迫(ひっぱく)し「このまま何もせずに町が10年持つかといったらそれは難しい」(西哲夫町長)として、原発に代わる地域振興策を中電側に要望していた。今回の発表がその回答になる。調査期間中、国から年間1億4千万円の交付金が町に入るなど財政的な恩恵は大きい。

 中電にも事情がある。島根原発で貯蔵する使用済み核燃料は重量ベースで容量の約68%。現状では余裕があるとはいえ、24年以降の2号機再稼働を目指しており、将来的な対応は避けては通れない。

 ただ、財政的に単独での建設は厳しい上、建設コストを減らすため隣接する四国電力や九州電力と組もうにも、両社は自前で原発敷地内に貯蔵場所を確保する計画を決定済み。そこで関電に対し、共同調査を打診したようだ。

 中電以上に困っていたのが、国内最多の原発6基が稼働する関電。原発内の使用済み核燃料プールが今後5~7年で満杯になる見通しという。

 7月28日に再稼働した高浜1号機に続き、9月中旬には2号機の再稼働も予定する関電は、全原発が立地する福井県との間で、中間貯蔵施設の候補地を県外に見つけると約束した。だが東電と日本原子力発電が出資する青森県むつ市の「リサイクル燃料貯蔵」の施設を共同利用する案が、地元の反発で暗礁に乗り上げており、中電との共同開発は「渡りに船」だった。

 一方で、中電と関電の連携には違和感しかない。両社は今年3月、電力販売を巡るカルテルで公正取引委員会から独禁法違反の認定を受けた。自主申告した関電が課徴金を免れる傍ら、中電は約707億円の納付を命じられ、社長、会長が引責辞任する異例の事態に。感情的なしこりも指摘される中、そこまで切羽詰まっていたのだろうか。

 そもそも中間貯蔵施設は、使用済み核燃料からまだ使えるプルトニウムやウランを取り出して、再び燃料にして原発で繰り返し使う核燃料サイクルの導入部分に位置付けられていた。

 しかし、プルトニウムなどを取り出す肝心な再処理工場(青森県六ケ所村)はトラブルが相次ぎ、完成のめどが立っていない。原発の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場も、受け入れの動きが出てきたとはいえ、先行きは見通せない。

 上関町で中間貯蔵施設が実現すれば全国2例目。ただしサイクルが確立できない現状では、保管場所を変えただけの「一時しのぎ」に終わってしまう。