「鳥取しゃんしゃん祭」の一斉傘踊りで、色鮮やかな傘を手に舞を披露する参加者=14日夕、鳥取市
「鳥取しゃんしゃん祭」の一斉傘踊りで、色鮮やかな傘を手に舞を披露する参加者=14日夕、鳥取市

 「しゃんしゃん」という涼やかな鈴の音が中心市街地に響いた。14日にあった鳥取市の夏を彩る「鳥取しゃんしゃん祭」の一斉傘踊り。コロナ禍を経て、街中での開催は4年ぶり。踊り手約2100人が歌に合わせて金銀の短冊や鈴の付いた傘を操り、華やかな「一斉美」を披露した▼台風7号が接近していたとはいえ、傘踊りでにぎわった街が翌15日、これほどの記録的な大雨に見舞われるとは思いもしなかった。鳥取県内で線状降水帯が発生。気象庁は鳥取市に大雨特別警報を発表した▼一夜明けたきのう、分かってきた被害の深刻さに身震いした。同市南部の佐治町では500ミリ超の24時間雨量を観測。佐治と市中心部を結ぶ用瀬町では、佐治川に沿った国道482号の一部が崩落し、孤立集落も発生した。被害がこれ以上拡大しないことを願うばかりだ▼一斉傘踊りは県東部に伝わる「因幡の傘踊り」をアレンジしたという。因幡地方が前代未聞の大干ばつに見舞われた江戸時代末期、五郎作という老農夫が三日三晩、笠(かさ)を振り回して踊り、雨乞いしたことが起源とされる。その趣旨からすれば、一斉傘踊りの成果が出たことになるが、今回ばかりは降り過ぎた▼「しゃんしゃん」には多く鈴が揺すられて鳴る連続音のほか、物事が円満に収まったことを祝って手を打つ音という意味もある。気は早いが、一日も早く復興を果たし手を打ち鳴らしたい。(健)