「ハロウィーンで渋谷に来ないで」と記者会見で呼びかける東京都渋谷区の長谷部健区長=5日、東京都千代田区の日本外国特派員協会
「ハロウィーンで渋谷に来ないで」と記者会見で呼びかける東京都渋谷区の長谷部健区長=5日、東京都千代田区の日本外国特派員協会

 「オーバーツーリズム」という言葉は、山陰ではなじみが薄いかもしれない。特定の観光地に多くの客が訪れ、地域住民の生活や自然環境、景観に悪影響を及ぼすことを指す。マナーを守っている客にも、悪い印象を与えてしまう▼象徴的なのが京都。食べ歩きをする観光客のごみのポイ捨てに加え、観光地に向かう路線バスが大混雑し住民が乗れないことも。いわば「観光公害」だ。新型コロナウイルス感染症の5類移行後初めて迎える紅葉シーズンを前に、関係者は対応に追われているそうだ▼こちらは観光公害ならぬ「イベント公害」か。「【注意】渋谷はハロウィーンイベントの会場ではありません」-。そう書かれた巨大な看板を、東京都渋谷区が渋谷駅前に設置した▼駅周辺には例年、ハロウィーンの10月31日前後に国内外から多くの若者が参集。路上飲酒が常態化し、けんかやごみの散乱が問題になっているという。区によると、ピークだった2019年は約4万人が路上にあふれ、訪日外国人客が戻ってきた今年は、6万人が集まりそうだと警戒する▼「ハロウィーンが目的なら渋谷に来ないでほしい」-。安全性に危機感を抱く長谷部健区長が、記者会見で異例の呼びかけをした。念頭にあるのが韓国ソウル・梨泰院(イテウォン)の雑踏事故。日本人2人を含む159人が犠牲になった。29日で発生から1年。あんな大惨事を二度と起こしてはならない。(健)