天井のパネルなど対策が施された段ボール授乳室=松江市岡本町、秋鹿なぎさ公園
天井のパネルなど対策が施された段ボール授乳室=松江市岡本町、秋鹿なぎさ公園

 「地獄への道は善意で舗装されている」というヨーロッパの格言がある。良かれと思って取った行為が悲劇的な結果を招く事態を指す。転じて「善意には責任が伴う」との意味を持つという。

 松江市の道の駅に設置された段ボール製の授乳室を巡り、賛否の声がネット上で飛び交った時にふと思い出した。「ないより助かる」との一方で「鍵も天井もなく怖すぎる」「衛生的に問題がある」…。寄贈した日本道路建設業協会も想定外の反応に困惑しただろう。

 そこからが早かった。批判を受けて撤去するのではなく、直ちに改良版の作製に着手。スライド式の鍵が付いた扉のほか、施錠の有無で在室状態が分かる仕掛けを施した。百点満点ではないかもしれないが、善意に伴う責任を果たしたと言える。

 さて、こちらの善意には責任が伴うのだろうか。経済対策で減税を打ち出した岸田文雄首相である。「成長の成果を適切に還元する」と所得税などを1人当たり計4万円減税し、政策を総動員して国民の可処分所得を上げると強調した。

 ただ、今のところすこぶる評判が悪い。世論調査で減税について「評価しない」が60%を超え、内閣支持率は30%を割った。将来の防衛増税が見え隠れするだけに、たとえ痛みを軽減する施策であっても国民は冷めた目で見つめているようだ。冒頭の格言には文字通り「悪意は善意によって隠されている」との意味もある。(玉)