10日に死去した前衆院議長の細田博之氏は生前、議長辞任の説明に合わせて次期衆院選の出馬に意欲を示す時に、必ず付け加えた一言がある。「次の選挙がいつかによるけども」▼早期の衆院解散ならば出馬するが、任期満了近くになれば分からない、とも受け取れた。それだけ今後の体調に不安があったのか。本人の口からもう聞くことはできない▼やむにやまれぬ事情もあったのではないかと推察する。2021年9月に竹下登元首相を兄に持つ竹下亘元復興相が死去。島根県選出の国会議員が若返る中、地方を守るために中央政界への影響力を維持しなければという自負が時折、垣間見えた。取材や会合でのあいさつで廃線の危機にあるJR木次線が話題に上ると、鉄路維持に向けた話が止まらなかった▼政治家の出処進退は本人の意向が第一であるのは言うまでもない。大物であるほど、健康に不安があったとしても周囲が引退を迫るのは難しい。ただ、細田氏も竹下氏も、現職のまま逝った。後継の国会議員が2人から助言をもらったり、人脈を受け継いだりすることはできない▼きょうは細田氏の通夜が、あすは葬儀・告別式がいずれも東京都内の斎場で営まれる。保守王国・島根はいずれやって来ると思っていた転換点を迎えた。中央政界でどう影響力を維持するかが課題になる中、政治家の引き際や代替わりの在り方を考える契機にもしたい。(吏)