岡本おさみさんの著書を再編集した「旅に唄あり」
岡本おさみさんの著書を再編集した「旅に唄あり」

 「米子は何もない」。今秋赴任した米子市内のあいさつ回り先で、街の特徴について複数人からこう言われた▼松江城や出雲大社のような国宝や全国的な観光スポットがないという意味だったが、続く話の中で、他にはないまちづくりのキーワードもあった。「人の集うまち」-。国鉄米子鉄道管理局発足以来の「鉄道のまち」であり、「山陰の商都」の名もふさわしい▼足元では今、人の集うまちを目指す具体的な動きもある。『襟裳岬』『旅の宿』『落陽』などの曲で知られる米子市出身の作詞家岡本おさみさん(故人)の音楽記念碑建設へ、全国の有志約50人による「岡本おさみさんを語る会」が今春発足。碑は来年7月完成の予定で、クラウドファンディング(CF)が始まっている▼生誕80年の昨年に、岡本さんの著書を再編集した『旅に唄あり 復刻新版』(山陰中央新報社刊)が発刊されたのが大きかった、と設立発起人の長谷川泰二さん(77)が話してくれた。巻末に自身の寄稿もあり「人間くさい家業の集合体の街」「人情の街」の米子の生活風景が、四つ先輩で同じ時代を生きた岡本さんの歌詞と重なった、とつづった▼19日午後3時から市内の飲食店で、語る会主催のライブイベント「岡本おさみさんを歌う夕べ」が開かれる。記念碑の建設活動開始記念の位置付けで、全国のファンが岡本さんの生まれ故郷に集う、まちづくりの第一歩になる。(吉)