今夏の陸上世界選手権男子3000メートル障害で6位に入賞し、先日発表された日本陸連の優秀選手賞に選ばれた。浜田市出身で順天堂大4年の三浦龍司選手の活躍は今年の陸上界でハイライトの一つだった。
パリ五輪を見据え、今は年明けの最後の箱根に向け調整中だろう。専門種目外ながら出場する駅伝の原体験は古里の大会にある。浜田東中時代、師走の石見路でたすきをつなぐ「しおかぜ駅伝」に出場し、2年連続で区間賞を取った。「タイムも走りの内容も納得していない。チームとしても優勝を狙っていたので喜びより悔しさの方が大きい」。当時紙面に載ったコメントを読むと、中学3年にして受賞に満足しないストイックさに大器の片鱗(へんりん)がのぞく。
石見路から大きな舞台へ羽ばたいた選手は数多い。それだけでなく「しおかぜを走ったのをきっかけに、高校や大学で陸上部に入った子は多い」と大会関係者がうれしそうに教えてくれた。
若い選手たちには走る楽しさとともに、古里や住んでいる地域の良さにできるなら気付いてほしい。コロナ禍を経て4年ぶりの開催で、選手集めはこれまで以上に苦労したと聞く。それでも代々受け継いだたすきをつなぎ、地域を元気づけたいと奔走し、集った仲間がいる。
少子高齢化や地域衰退という目の前の障害を跳び越えていくかのような力強い走りに沿道から声援を送りたい。いよいよ明日号砲が鳴る。(史)