この一年の世相を表す「今年の漢字」が「税」に決まった。生活に直結する増税や減税の動向に注目が集まり、インボイス制度やふるさと納税など税にまつわる話題が取り沙汰されたことで多くの得票を集めたようだ。
ただ、投票締め切りがもう1カ月後だったら、これらの漢字が上位に食い込んだのではないか。裏金の「裏」と「金」である。自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑で、岸田文雄首相はきょう、松野博一官房長官ら安倍派の4閣僚を交代させるという。
販売ノルマを超える売り上げのキックバック(還流)を受けたことが問題視されているが、政治資金収支報告書に記載していれば支障はなかった。なぜ記載しなかったのか。キックバックされたカネを何に使ったのか。そしてこうした手口がいつ始まり、常態化したのか-。
「お金に色はない」とよく言う。不法に得た汚いお金でも、汗水たらして得たきれいなお金でも、懐に入れば同じお金に違いないという道理である。とはいえ、ルールの逸脱が発覚すれば「裏」のレッテルを貼られ、責任を追及されるのは当然のこと。今年の漢字に「税」が選ばれたように、国民の「金」に対する目はシビアだ。
振り返れば「金」は過去4回も今年の漢字に選ばれている。ただし、こちらは全て五輪開催年で金メダルの「金」だ。人々を感動もさせれば、堕落もさせる。罪深い一文字である。(健)