島根県唯一のデパート・一畑百貨店(松江市朝日町)の閉店まで1週間となる中、名物催事の北海道物産展に出店してきた北海道の有志が6日、地下食品コーナーで「ミニ北海道フェア」を始めた。「一緒に最後を盛り上げたい」と口をそろえ、閉店日の14日まで声を張り上げて仲間である従業員と共に駆け抜ける。
「おいしいよ」「一口食べてみて」。6日午前10時過ぎ、地下食品コーナーの一角で、市場のような威勢のよい声が響いた。
札幌、函館両市の海産物販売店7店舗が並び、家族連れらが開店直後から訪れた。いくらやほっけの開き、海藻の加工品など北海道ならではの食品を味見しながら品定めし、「また来たよ」と声を掛ける常連客の姿もあった。
地元にいながら名産を楽しめる北海道物産展は百貨店の目玉で、ほぼ毎年開催し、48回の歴史を刻む。昨秋に最後となったが、長年出店してきた北海道の有志が立ち上がった。
「最後に一緒にやりませんか」と百貨店に声を掛けたのは、天然昆布などを扱う販売業・海花(北海道函館市)常務の坂巻延男さん(50)。道内の同業も「お客さん、店員の方々の人柄がよく、働きがいがあった」と賛同した。
船岡商店(同市)の平沼三紀店長(45)は駆け出しの頃から23年にわたり、物産展担当として通い続けた。島根県内での取引先が広がり、歴代の百貨店従業員とも家族ぐるみの付き合いで、「チャンスがあればもう一度島根で仕事がしたいと思っていた」と力を込める。
閉店を控える地下食品コーナーは新たな商品の入荷が難しく、一部で空になった棚もあるだけに、一畑百貨店食品部の安西啓介部長(53)は「にぎやかにしていただいてありがたい」と感謝。ラストスパートに向けて「北海道の皆さんと最後まで駆け抜けたい」と気合いを入れた。
(多賀芳文)