切り抜いた本紙論説を手にする山上敦也さん=出雲市今市町、出雲高校
切り抜いた本紙論説を手にする山上敦也さん=出雲市今市町、出雲高校

 興味を持った新聞記事を読み、意見をまとめる「第14回いっしょに読もう! 新聞コンクール」(日本新聞協会主催)の高校部門で出雲2年の山上敦也さん(17)が優秀賞を射止めた。本紙論説「性自認とトイレ制限」を選び、性的少数者の権利について熟考を重ねた。山上さんは「誰もが幸せになれる未来を目指し、社会を見直していくべきだ」と訴える。


<該当の本紙論説>
論説 性自認とトイレ制限 意識改革を強く促した

 昨年7月13日付論説は、戸籍上男性でトランスジェンダーの経済産業省職員が、省内で女性用トイレの使用を不当に制限されたとして国に改善を求めた訴訟で、職員が逆転勝訴した最高裁判決を論じた。ジェンダー問題に興味があった山上さんは、母に記事を薦められて「自分の考えを整理してみたい」と選んだ。

 読んだ直後は性的少数者と同じトイレの使用に戸惑いを感じた。多数派の意見を尊重し、制限に問題はないとした人事院の判断にも「合理性はある」と思ったという。一方、母に意見を聞いたところ「トイレ共用に抵抗はない」「少数派の人権を守るべき」との回答があり、思索を巡らした。

 母と会話を重ねるたびに変化を恐れ「自分が困っていない今」を守ろうとしている自分に気付いた。

 その結果、誰がどのように困っているかに目を向ける視点が必要で、権利を考える時に数は関係ないとの結論に至った。今は母と同じように「他人が困っている今」を助けるべきだとの考えという。

 学校現場では、トイレ以外に制服の問題があるとし「身近にある偏見や誤解と向き合い、困っている人を助ける意識を持ちたい」と力を込めた。

 コンクールには国内外から約5万9千編の応募があった。高校部門には約2万9千編が寄せられ、山上さんは最優秀賞1編に次ぐ優秀賞(10編)を射止めた。
(佐野翔一)


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