炉が崩され、火の粉が舞う中、姿を現したけら=島根県奥出雲町大呂、日刀保たたら
炉が崩され、火の粉が舞う中、姿を現したけら=島根県奥出雲町大呂、日刀保たたら

 国内で唯一、日本古来のたたら製鉄を営んでいる島根県奥出雲町大呂の日刀保たたらで3日早朝、三日三晩の操業を経て炉を崩し、砂鉄が溶けてできた鉄の塊を取り出す「けら出し」があった。関係者約80人が見守り、熱気渦巻く伝統の技に目を見張った。

 日刀保たたらは日本美術刀剣保存協会(東京都)が運営する。けら出しまで70時間以上にわたり、村下(むらげ)(技師長)の木原明さん(88)と村下養成員12人が、粘土製の炉に砂鉄と木炭を入れて燃やし続けた。

 

 

 炉内の最高温度は1000度を超える。養成員によって操業に伴い薄くなった炉壁が崩されると火の粉が高く舞い、熱気が周辺に広がるとともに、炎をまとった赤黒いけらが姿を見せた。見学者が「おぉ」と感嘆の声を上げる中、養成員が土ぼこりと汗にまみれながら、大かぎや小かぎといった道具を使い、崩した炉壁をかき出していった。

 操業1回で約3トンのけらができる。割った後、日本刀の原料となる上質な鉄(玉鋼)を全国の刀匠に供給する。木原さんは「全員が結束して挑み、立派なけらを精製することができた。刀匠も喜んで日本刀の制作に精進してくれるはずだ」と期待した。(山本泰平)