選抜高校野球への出場が決まり、涙を流す日本航空石川の選手=1月26日、山梨県甲斐市
選抜高校野球への出場が決まり、涙を流す日本航空石川の選手=1月26日、山梨県甲斐市

 球春到来を告げる選抜高校野球大会が18日に開幕する。96回の歴史を数える大会は、1995年1月17日の阪神淡路、2011年3月11日の東日本と二つの大震災を乗り越えて開催にこぎつけた▼被災地の球児たちの懸命なプレーは胸を打った。阪神淡路の際は兵庫県から3校が選ばれ、神港学園が8強入り。東日本では発災17日後に宮城県の東北が1回戦に臨んだ。甚大な被害に遭った現地を思うと、複雑な心境もあっただろう▼今回は元日に発生した能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市に校舎がある日本航空石川が出場する。地震でグラウンドが使えなくなり、チームは系列校のある山梨県に拠点を移した。出場決定時に選手が涙を流す姿を伝えるテレビニュースの映像は、目に焼き付いている▼10歳の頃、阪神淡路を経験した中村隆監督は「本当に苦しんでいる人たちはもっといる。こうやって野球でつながって、一つになれていることに本当に感謝しないといけない」とインタビューに答えていた。その言葉の重みをかみしめる▼同校の選抜大会を巡る苦難は今回にとどまらない。前回出場が決まっていた20年大会は、新型コロナウイルス禍で中止に。山陰勢も平田と鳥取城北の2校が春の甲子園に立つ機会を失った。マスク着用が個人の判断に委ねられたのは、ちょうど1年前。当たり前の日常の大切さを思い出させてくれる春である。(吏)