米軍の最新鋭輸送機オスプレイに乗ったことがある。海兵隊用の「MV22」。とはいえ実際に上空を飛行したわけではなく操縦席に座っただけ。2021年12月に沖縄県宜野湾市の普天間飛行場を視察した際、「よかったら座って」という米軍担当者の誘いに乗ってしまった▼とにかく狭い。整然と並ぶ機器に触れないよう体をねじりながら座ったため腰に鈍い痛みを感じた。同行した他紙の記者は「操縦席に座らせるなんて日本の自衛隊では考えられない」と驚いていた。写真撮影に制限もなし。過剰なほどの米軍のサービスは事故続きの悪評を払うためか、と勘繰った▼その評価はむしろ悪化している。昨年11月、鹿児島県・屋久島沖で搭乗員8人が死亡する墜落事故が発生。これを受け米軍は飛行を停止していたが、部品の故障を特定し、構造上の欠陥はなかったとして飛行再開を決定。きのう、沖縄上空での運用を再開した▼いや、待ってほしい。故障箇所は特定しても、事故原因については詳細を伏せたまま。それでどうして容認できるのか▼17年12月には普天間飛行場近くの小学校の校庭に重さ7キロ超の米軍の大型ヘリコプターの窓が落下。それ以降、米軍機が上空を飛ぶたびに児童を校庭から避難させていると聞いた。「いつ墜落するか分からない恐怖がまた始まる」。飛行再開を受けた住民の声は悲痛だ。米軍の口車に乗るわけにはいかない。(健)