
―農機メーカーとして「島根発のグローバルカンパニー」を目指しておられます。
当社は三菱重工業とインドのマヒンドラ社の子会社で、トラクター、コンバイン、田植え機の「本機」を主に開発、製造、販売を行い、国内外に出荷しています。
売上比率は国内7割、海外3割です。特に近年は海外販路の拡大による事業の安定化を図っており、2023年にはポルトガルやトルコといった欧州への輸出を始めました。
24年2月には、業界最速となる新型田植え機の日韓での販売をスタートしました。
―新型田植え機について詳しく聞かせてください。
10年ぶりに全面改良したフラッグシップモデル「XPS(クロスピーエス)」です。
エンジン強化や水平自動制御機構の改良により、1秒間に1.95メートル分を植え付けられる業界最速(当社調べ)を実現しました。効率化を求める現場の切実な声に応えられる商品に仕上がりました。
国内市場が縮小する中、日本式の水稲栽培を行う韓国は、地理、農業環境といった点で非常に重要な市場と捉えています。
韓国では大手メーカーと提携し、OEM(相手先ブランドによる生産)製品として販路を広げ、国内と合わせて5年間で2千台超の販売を目指しています。

―海外人材の獲得、女性の管理職登用など人材戦略を進めています。
優秀な人材獲得のため近年は海外に出向いた採用活動を行い、今春には日本の方だけでなく韓国、インドからも人材を迎えます。
女性の管理職登用は就任後3年間で倍増し、24年度には初の部長が誕生します。
国籍や性別に関わらず個々の能力を認め、この地で活躍してもらえる環境を整えています。

―創業110年となります。
本社向かいに立つ創業者・佐藤忠次郎の暮らした家の改修を現在進めています。活用法は検討中ですが、当社の歴史、伝統の証でもある場を地域で身近に感じてもらえるようにしたいと考えています。
完成車をつくるメーカーは珍しいので、ぜひ工場見学にも訪れてほしいです。

現代は先が見通せない変化の激しい「VUCAの時代」ともいわれます。そんな中でも目の前の一つ一つのことに集中して取り組んでほしいです。
自分の半生を振り返っても、毎日、毎月、毎年の積み重ねの上に今の自分があることを実感します。「10年、20年後の自分は今の自分が決める」という思いで日々を過ごしてください。

齋藤徹=東京都出身(64歳)2021年に現職に就任。
空き時間や休みの日はフランス語の勉強をしたり、登山やスポーツクライミングに出かけたりしています。島根に移り住んだ3年間で大山には5回ほど登りました。山陰には週末に少し足をのばして登れる山がいくつもあり、毎月どこかの山に登っています。
仕事以外の何かに没頭できる時間がバランスを保つ上でも大事だと感じています。