携帯電話を持って30年になるが、メッセージを送る時に絵文字を使ったことがない。メールやLINE(ライン)が苦手な上に、感情を絵文字で表現するのが恥ずかしく、使い方も分からないからだ。気持ちを表現したとしても「!」ぐらい。行間や文末には必ず句読点を入れている▼最近、マルハラスメント(マルハラ)が話題になっている。LINEなどで「承知しました。」といったメッセージが句点で終わっていると、若者は威圧感を覚えて、相手が怒っているのではないか、と感じるという。知った時、自分はマルハラじゃないかと思わず笑ってしまった▼歌人の俵万智さんが自身のX(旧ツイッター)で詠んだ短歌が秀逸で大きな反響を呼んだ。<優しさに ひとつ気がつく ×でなく ○で必ず 終わる日本語>。句点を「マル」だと思えば意識は変わる。そもそも句点で怒りを表すおじさん、おばさんはいない▼何でもハラスメントになる難しい時代だ。何かに付けてハラスメントと呼ぶこと自体がハラスメントになりかねないし、世代間の溝をより深くしている要因だと思う▼文章を書くことを職業にしていることもある。これからもメールやLINEのメッセージで句点は使うし、できれば電話か直接会って相手と話をしたい。なくすべきなのは句点ではなく、先入観とコミュニケーション不足。そして最後は優しさがあればきっと溝は埋まる。(添)