完成した「波根の賑わい」を手にする波根むかし語りの会のメンバー=大田市波根町、波根まちづくりセンター
完成した「波根の賑わい」を手にする波根むかし語りの会のメンバー=大田市波根町、波根まちづくりセンター

 かつて交通の要所として栄えた大田市波根町のまちの歴史を伝えようと、住民でつくる波根むかし語りの会が昭和20、30年代の商店の状況をまとめたパンフレット「波根の賑(にぎ)わい」を作った。旧街道沿いを中心に100を超す商店や旅館、手工業の店が軒を連ねたかつてを懐かしみ、地図上にまちの盛況を再現した。

 波根地区は、江戸時代に石見国の東端の宿場町として栄え、大正時代に鉄道が開通。昭和20、30年代は旅館、呉服店、食料品店、造り酒屋、医院・薬局、造船所、鍛冶屋などさまざまな店舗と事業所が集まった。一方、高齢化などで様変わりし、今も残る店はわずかになった。

 語りの会は2015年に結成し、会員は住民や同町出身者の57人。21年にワークショップを開いた際、かつてのまちの記録を残したいとの発案があり、当時あった店舗・事業所名と所在地を地図上に再現することにした。2カ月に一度の例会で、会員や住民の記憶のほか、昔の広告チラシといった記録を収集。必要に応じて現地に足を運んだ。

 パンフレットはA4判6ページ。町を3エリアに分け、計123の店舗・事業所を掲載した。地図に落とし込み可視化した結果、旧街道沿いに店舗が集中した様子が見て取れる。地元の14事業所・団体に寄付を募って900部を印刷し、大田市立図書館に寄贈したほか、住民らに配布する。

 勝部衛会長(76)は「波根町は商業、鉄道、漁業、農業が栄え、一つの町の中で経済が回っていた。記録に残し、後世に歴史を伝えたい」と話した。

 (勝部浩文)