短歌 寺井淳選

ヨシッできた慣れぬ手つきの主夫稼業背なの写真にほほ笑む気配  雲 南 武田 常夫

  【評】妻を亡くし、慣れない家事茶飯に励む〈私〉の日々を作者は描き続けている。

 この歌の要は「背なの写真」にあり、多くを言わずとも二人の世界がよく見えるだろう。

自転車でかかりつけ医に急ぐわれくすりの切れ目がまさに今日なのだ 

                               奥出雲 藤原 宣子

  【評】下句の切迫感を味わいたい一首。「金の切れ目が…」というせちがらい言葉も連想され、深刻さも何や...