浜田市国分町の石見畳ケ浦で15日、洞窟内にある観音像を供養する伝統行事があった。同町唐鐘地区の住民5人が海難事故を守った言い伝えが残る観音像に思いをはせ、地域の安全を願った。
住民によると、唐鐘地区には江戸時代から続く言い伝えがあり、北前船が多く往来した当時、住民が遭難した船の残骸から小さな観音像を拾って供養したところ、海難事故が減ったという。
その後、観音像は行方知らずとなったが、約80年前、言い伝えを知る当時の有志が観音像(幅約50センチ、高さ約1メートル)を建立し、ほこらを整備した。石見畳ケ浦の洞窟の穴にちなんで「穴観音」と親しまれている。像を建てたとされる6月、毎年住民で供養している。
この日は5人が般若心経を唱えたほか、鈴を鳴らして観音像の繁栄を願う御詠歌を響かせた。観音像の建立当時を知る釜田一子さん(99)は「観音像をしっかり見守り、次の世代に受け継いでほしい」と話した。(宮廻裕樹)