島根県津和野町出身で、お笑いコンビ「ニッチェ」の江上敬子さん(39)によるエッセー「ニッチェ江上の子育て珍道中」が9月1日、山陰中央新報デジタル(Sデジ)で始まる。人気芸人として多忙な日々を送る一方、2児の母として育児に奮闘する様子をつづる。連載開始を前に、3回にわたり故郷への思いや子育てについて語ってもらった。 (情報部・山口春絵)
ニッチェの江上敬子さん
今は合併して津和野町になっているが、旧日原町の青原というところで生まれ育った。12年前の山陰中央新報のエッセー「女芸人ニッチェのたわごと」にも書いたけれど、「何もない」ところ。当時は子どもがいる家はわが家しかなくて、近くに友だちもいなかった。小学校の同級生も十数人で、普段はじいちゃんばあちゃんが遊び相手だった。今思えば、子どもの頃は大人と話すことが多かった。同級生がたくさんいることに憧れた。

地元は本当に山しかないところだったので、変なうわさが立つ。「山の上に開けた大きい街があって、俺はそれを見た」「あの山を越えたらそんなに栄えた街があるのか」。友だち3人くらいで「越えてみるか」と話したことがある。それくらい、お店のたくさんある街が夢だった。
小学生の頃、隣の益田市に母親や友だちと汽車で遊びに行った時はどきどきした。大型商業施設ができた時は「30分でいいけえ、連れて行ってくれ」と親にお願いした。深夜まで営業しているファミリーレストランは、最高の刺激だった。
母親は「食事作法やマナーを教える。本当においしいものを食べさせてあげたい」と言って、小学校高学年くらいからフランス料理店に連れて行ってくれた。フォークやナイフが並んでいて、スプーンでスープをすくう時のマナーとかを教えてくれた。ウナギ屋さんやおすし屋さんも...
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