そろそろラジオからキャンディーズのヒット曲『暑中お見舞い申し上げます』が流れる季節。暑中見舞いは二十四節気の小暑(7日)から立秋(8月7日)までに送るのが通例という▼わが家には昨年まで、かつて取材した80代後半の隠岐の女性から、くじ付き暑中見舞い用はがきの「かもめ~る」が届いた。手書きの近況を読むと、元気そうな様子と、会いに行けなくても交友が続いているという安心感に満たされる▼若い人の間では廃れているが、日本で古くから続く手紙の習慣は美しいと感じる。ただ、日本郵便の「かもめ~る」は昨年を最後に廃止された。1986年に始まり、発行枚数は93年の3億4千万枚がピーク。近年、個人間の発送は激減したが、企業のダイレクトメールに活用され、最後の昨年は1億4千万枚が発行された▼昔より人間関係が希薄になったのもあるが、大きな影響となったのが会員制交流サイト(SNS)の登場だろう。知人、友人を登録した上で互いの近況を書き込み、「いいね!」ボタンを押すだけで、一応は「つながり」を感じることができる▼7日と12日に山陰両県を襲った大雨が報道されると、県外に住む友人からSNSを通じて、多数の「大丈夫ですか?」というメッセージが届いた。ここ数年、同様に「大丈夫でした」と応対している。気候変動により暑中見舞いの時季と形態が変わってしまった気がする。(釜)