最初の東京五輪を間近に控えた60年前のきょう、都心と羽田空港を結ぶ東京モノレールが開業した。車両が軌道をまたいで走行する跨座(こざ)式モノレールでは世界初の都市交通機関として誕生。空中を走るような姿は「未来」をイメージさせただろう▼1日当たりの輸送力が約25万人という東京モノレールが還暦を迎えた一方、幕を閉じる「新交通システム」も。広島市安芸区では4月末、「スカイレール」が運行を終えた。懸垂式モノレールとロープウエーを一体化したようなスタイル。JR山陽線瀬野駅と高台団地の約1・3キロ、高低差200メートルを6分ほどで結んだ。住民の足として26年間利用されたが、採算面や老朽化が重荷になった▼それでも交通渋滞の緩和や環境への配慮から、新交通システムの研究開発が進む。開業から1年を迎えた宇都宮市などの次世代型路面電車(LRT)「ライトライン」は想定を超える利用者だという▼都市部の交通網が整備される半面、山陰など地方は重い交通課題を抱える。路線バスの減便に鉄道の存廃。中山間地域はより深刻だ。運転免許を持たない高齢者にとって、買い物や通院など暮らしの維持に直結する▼地域を回るコミュニティーバスもあるが、運転手確保に苦労する。ここは給与アップや短時間勤務の導入など思い切った待遇改善も必要だ。地方にこそ、交通と生活を結ぶ新たな雇用のシステムが求められる。(彦)