夜、自宅の横で一服していると、玄関灯に4、5匹の虫がいることに気付く。カメムシだ。油断すると、家に入ってくる。今夏、過去にないほど遭遇した▼食卓も脅かす。10年前からコメを買っている知人からLINE(ライン)が届いた。「今年はカメムシ被害と猛暑の高温障害で、量、質とも最悪の状態。皆さんに食べていただくような状態ではありません」▼日本人の主食・コメがピンチだ。8月にスーパーの棚から姿を消した。農林水産省は台風や南海トラフ地震臨時情報によるまとめ買いと、本年産の収穫が本格化する前の品薄になる時期が重なったことを理由に挙げる。新米が流通する9月に品薄が解消する見通しを示し、確かに一時期に比べて並ぶようにはなったが、値段は高い。5キロ約3千円で普段の1・5倍。「令和のコメ騒動」はしばらく続きそうだ▼心配なのは「子ども食堂」への寄付だ。当社も2年前に始め、秋になるとたくさんのコメをいただいた。物価高に追い打ちをかけるコメ不足。生活困窮世帯などを支援する「フードバンク」を含めて地域の力で支えたい▼秋になり、自宅からカメムシはいなくなったが、食卓から当たり前が消えた。知人からのラインには「品種を変えて出直します」と記されていた。気候変動や農業政策、食料自給率…。当たり前の尊さをかみしめるとともに、この国が抱える課題が頭に浮かんでくる。(添)