往年の学園ドラマの名作『3年B組金八先生』に「腐ったミカンの方程式」という言葉が登場する。箱の中に腐ったミカンが一つでもあると他のミカンにも腐敗が広まることから、クラスの中に1人の不良少年がいると全体に与える悪影響が広まるという懸念を指した言葉である
40年以上前のドラマを思い出したのは、それとは正反対に1人の選手の加入により、あるチームが生まれ変わって大躍進を遂げたと知ったから。舞台は岡山大陸上競技部。主役は歯学部4年の石鍋颯一さん(25)だ
もともとは駅伝の強豪・青山学院大の陸上部で長距離を専門にしていた。全国から有力選手が集まる中、学生三大駅伝への出場はかなわず、最終学年はアキレス腱(けん)を痛めてマネジャーに転じた
「走るのはもういいかな」と思っていたが、歯科医の父親の後を継ぐため、2022年春に編入した岡山大で陸上部の練習を見学し「もう一度大きな舞台を目指したい」と一念発起。青学大で学んだ練習方法や体幹トレーニングなどを取り入れると、チーム全体が急成長。きょう開催される第36回出雲全日本大学選抜駅伝競走(出雲駅伝)の出場権を獲得した。自身も、そしてチームにとっても初の三大駅伝だ
出場が決まると友人から、歯医者に引っかけ「ハイシャ(敗者)復活だね」と言葉をかけられたという石鍋さん。学園ドラマになりそうな物語の第一章に注目したい。(健)