島根県政界にとって4月の衆院島根1区補選は衝撃だった。1996年の小選挙区制度導入以降、初めて自民党が負けた。全国3補選のうち唯一の与野党一騎打ちとなり、自民、立憲民主党とも大物議員が続々来県。最大の争点は、自民派閥の裏金事件を受けた対応だった
「島根から政治を変える」と叫ぶ立民に対し、自民は謝罪した上で改革を誓った。人口減少で疲弊が進む地方に政治は向き合い、役割を果たしてきたのか。有権者の疑念といら立ちも加わり、矛先は長年政権の座にいた自民に向かった
補選後の政治の行方を見守ったが、変わったとは思えない。改革を誓ったはずの自民から政治改革に対する本気度は伝わらない。野党も批判を続ける一方、政治資金を管理、監督する第三者機関の設置は多くの党が時期を明示していないなど改革の実効性に疑問が残る
政治不信が続く中、衆院選が始まった。自民は窮地に置かれる中で登板した石破茂首相が衆院解散時期などを巡って「変節」を繰り返した。立民も野田佳彦代表の下で「政権交代は最大の政治改革だ」と訴えるが、心に響かない
補選から半年。再び「政治とカネ」問題が大きな争点になっている。何かを変えるのは難しい。ただ、政治は国民の命、生活を守る責任を負っている。地方再生の処方箋を含めて約束したことが守れなければ嘘(うそ)になる。責任と覚悟。有権者は見ている。(添)