神戸市の兵庫県立舞子公園で見られた「紫金山・アトラス彗星」=13日午後6時24分(1秒露光)
神戸市の兵庫県立舞子公園で見られた「紫金山・アトラス彗星」=13日午後6時24分(1秒露光)

 天文ファンのみならず関心を集めている紫金山・アトラス彗星(すいせい)。長い尾を引く神秘的な姿が写真や映像で紹介されている。肉眼でも確認できる可能性がある貴重な機会。約8万年かけて太陽を回っているとされ、壮大なスケールの巡り合いだ。最近、何度か空を見上げたが、お目にかかれていない。

 古来、彗星はさぞかし不思議なものだったのだろう。個人的に初めて見たのは1997年のヘール・ボップ彗星だった。市街地からも肉眼で見ることができ、夜空に明るく浮かんだ姿が脳裏によみがえる。

 彗星の本体は氷と砂粒のようなちりの固まり。「汚れた雪だるま」の例えは分かりやすい。中でも知られているのはハレー彗星だろうか。約76年周期で地球に接近し、出現記録は紀元前にさかのぼるとされる。前回は1986年に観測された。昨年12月、太陽から最も遠い位置に到達した後、地球の方へ折り返しているそうだ。

 ハレー彗星が軌道上でまき散らすちりの帯。その中を地球が通ることで見られるオリオン座流星群の活動が21日に極大を迎える。紫金山・アトラス彗星も、まだ観測のチャンスがあるようだ。

 「彗星のごとく」とは、有望な新人が突然華やかに現れる様の例え。古くは妖星として天変地異の前触れなどと思われた彗星だが、今や混迷する世界の希望の光と捉えたい。爽やかな秋の夜、壮大な宇宙に思いをはせて空を眺めるのもいい。(彦)