日中国交正常化を果たし帰国した田中角栄首相=1972年9月、羽田空港
日中国交正常化を果たし帰国した田中角栄首相=1972年9月、羽田空港

 きょう10月28日は「パンダの日」らしい。日中国交正常化を記念して52年前のきょう、中国からジャイアントパンダの「カンカン」と「ランラン」が東京・上野動物園に贈られたのが由来という

 パンダのように人気があり、高い集客効果を持つ人や物を表す「人寄せパンダ」「客寄せパンダ」という言葉は当時生まれたものだと思っていたが、実際はその9年後だったそうだ

 広めたのが田中角栄元首相。1981年7月の東京都議選。候補の応援演説に立つと、こうダミ声を張り上げた。「私は人寄せパンダ。さらし物になっていても、頼まれればどこにでも行く」。ロッキード事件の被告でありながら応援に飛び回り、ユーモアに毒を交えた“角栄節”で聴衆の心をつかんだ。思えば、国交正常化を実現させたのがご当人。何とも的を射たネーミングだ

 その成り立ちからすれば「人寄せパンダ」は選挙用語なのかもしれない。今回の衆院選で自民党の「人寄せ」ならぬ“票寄せパンダ”役を務めたのが石破茂首相。「党内野党」と揶揄(やゆ)されながら、国民人気の高さから党総裁に選出された。角栄氏を「政治の師」と仰ぐのも因縁めいている。ただ党派閥裏金事件の逆風の中、師匠のように有権者の心をつかむのは難しかっただろう

 「政治とカネ」への対応が最大の争点となった衆院選が終わった。“票寄せパンダ”の働きぶりはどう評価されるのか。(健)