この一行に逢(あ)いにきた-。27日に始まった読書週間(11月9日まで)の標語。663通の応募から選ばれた。
標語を作った中山実穂さんは「本の中にグッとくる一行があって何度も目でなぞり、ついには暗記。作者はこの一行のためにこの本を書いていて、読者はこの一行に出逢うため読んでいるのだと思うとき、幸福になる自分がいます」と、主催団体に思いを寄せている。
この気持ちはよく分かる。ふらっと寄った書店で目に留まる一冊は、自分が今求めている物語だと気付くことがあり、行き詰まったときは書店や自宅の本棚の前に立つ。心を癒やし、刺激する文章の力をもらってリセットする。だから各界で活躍する人がどんな本棚を持っているのかは少し気になるところ。雑誌『暮しの手帖』の連載企画「あの人の本棚より」は、そのニーズを満たしてくれる。
紹介される書籍に加え、写真に添えられた一言も味わい深い。画家で絵本作家の堀川理万子さんは「本を読む意味は一人一人見つけるしかない」。「会話だと返事がきて終わりだけど、本は読んで考えたことへの返事がないところがいい」とは美学者の伊藤亜紗さん。
読書週間は戦争の傷が残る1947年、「読書の力によって平和な文化国家を作ろう」との決意から出版社や図書館、マスコミによって始まった。今、必要な物語は何か-。本の力を借りて自分と向き合う週間にもしたい。(衣)