若者の門出を祝おうと、JR松江駅に掲げられた横断幕=2022年3月、松江市朝日町
若者の門出を祝おうと、JR松江駅に掲げられた横断幕=2022年3月、松江市朝日町

 先日、出張で特急「やくも」の新型車両に乗った。快適さを味わっていると、心地よいメロディーが流れてきた。山陰発のバンド「Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)」の楽曲だ。米子駅でも発車の際に流れる。

 列車の接近時や発車時に流れるメロディー。約30年前、大学時代を過ごした東京・蒲田の駅は『蒲田行進曲』が流れていた。今も上京時に聞くと青春時代がよみがえる。

 「駅メロ」は全国各地に広がる。神奈川県の茅ケ崎駅は「サザンオールスターズ」の『希望の轍(わだち)』。採用を願う1万人超の署名が鉄道会社を動かした。秦野駅はロックバンド「LUNA SEA」の楽曲にしようと市民が動いているという。

 ローカル路線が岐路に立っている。芸備線は国が全国初の存廃を話し合う再構築協議会を設置し、木次線はJR西日本が地域交通体系の在り方に関する協議を沿線自治体に申し入れた。三江線の廃止を取材した経験から思うのは行政、鉄道会社任せではなく、地元が主体的に動くことの重要さ。地元の誇りの醸成と地域活性化に向けてできることはまだまだある。

 コロナ禍だった3年前の春、進学や就職などで新たな道に進む若者を応援するキャンペーンに携わり、駅構内に激励する横断幕を設置してもらった。時代が変わっても「出会い」や「別れ」などのドラマを生む駅はさまざまな可能性を秘めている。(添)