<大きいことはいいことだ>というチョコレートのCMソングを懐かしく思う人も多いだろう。気球に乗った作曲家の山本直純さん(1932~2002年)が指揮棒の代わりに大型の板チョコを振る奇抜さが注目された▼チョコは前回の東京五輪から3年後の1967年に発売された。製菓会社によると、カカオ豆の輸入価格が下がったタイミングを捉えて発売を決定。それまでの日本は慎(つつ)ましやかな幸せが美徳とされていたが、高度成長期を迎え「胸を張って、大きいことはいいことだと主張しよう」と、CMの方針が決まったという▼それから半世紀余り。2度目の東京五輪を控えた先月上旬、対照的な広告を見つけた。大手紙のテレビ欄左隅に作ったわずか3ミリの細長いスペースにこう書かれていた。<よく気づきましたね。わずか3ミリのスキマに、Gは潜むことができるんですよ…>▼Gはゴキブリのこと。「G」の文字に触覚まで描かれていた。ゴキブリ用殺虫剤を販売する製薬会社の「史上最狭スキマ広告キャンペーン」。目を凝らさないと見逃しそうで、目立つのが大前提という広告の本筋に逆行するものの、発想は面白い▼コロナ禍で生活様式が変化し、テレワークでできた「スキマ時間」を生かして副業を始めた人も多い。こちらも発想の転換が重要だ。<大きいこと>をはじめ、従来の王道を貫くだけでは心に響かない時代になった。(健)