<まるでノルマンディー上陸作戦だ。とても署の旅行とは思えん><まるで女子校だよ。ゲーセンなのに男が近寄れん>。1976年から40年間、週刊少年ジャンプで連載された『こちら葛飾区亀有公園前派出所』は、比喩が笑える漫画だった。
主人公の両津勘吉は新しもの好き。30年前、米マイクロソフト社のパソコン基本ソフト「ウィンドウズ95」が発売されると早速、作中に登場した。ただ、このときばかりは作者の秋本治さんもソフトの機能を測りかねたようだ。
例えたのが大企業の御曹司として生まれ、語学堪能で仕事の要領も抜群に良い同僚警察官の「中川君」。やがて自分もパソコンを使うようになると便利さを実感するようになった。一方で「中川君とは違うな」と安心もした。ところが…。
ウィンドウズ95が普及させたインターネットに集まる膨大な情報を糧に人工知能(AI)が発展。本当に中川君のような“完璧キャラ”になってきた。9年前、囲碁AIが初めて世界トップ棋士を破った後、AIは人間の幅広い創造の領域に入り込んでいる。
多くの人が年50冊も本を読めないのに対し、現在の中川君はまるで「巨大な図書館」。蔵書が頭に整った状態で入り、応用もできそう。量では勝負ありか。最近書店で見つけた哲学本や芸術本を読みふけっている。AIのような答えはなくとも、そこには人間の英知と感情がほとばしっている。(板)